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外科の紹介

当院は、日本外科学会専門医、日本消化器外科学会専門医の修練施設、日本乳癌学会関連施設です。消化器(胃、大腸、肝臓、膵臓、胆嚢・胆管)や乳腺における腫瘍の外科治療、および進行癌における各臓器腫瘍の化学療法、終末期の緩和医療を専門としています。進行癌に対しては手術だけでは治療成績は不良であり、化学療法、放射線療法、手術を組み合わせた集学的治療を積極的に行い、治療成績の向上を目指しています。

近年の患者様の体に負担の少ない手術(低侵襲手術)の普及に伴い、当科でも積極的に腹腔鏡手術を行っています。低侵襲手術は従来の開腹手術と同等の安定した手術成績といわれ、術後の早期回復や術後の体力低下の低減につながり、癌の治療成績も改善することが示されており、徐々に適応を拡大しています。

その他、鼠経ヘルニアや胆石症、痔核などの良性疾患、虫垂炎や胆嚢炎、腹膜炎など緊急手術を要する疾患を対象に幅広く外科領域の診療を行っています。

週1回、消化器内科との合同カンファレンスを行い、各疾患ガイドラインに基づき、治療方針や手術適応を検討しています。 また、外科カンファレンスを毎日行い、術前・術後の症例の共有や困難症例の治療方針の検討を行っています。

主な診療内容

大腸癌について

大腸癌は年々増加しており、男性では肺癌について第2位、女性では第1位の死亡者数となっています。しかし、その治療成績は手術や化学療法、放射線療法の進歩により向上しています。大腸癌の治療の中心は手術であり、その手術の中心となっているのは腹腔鏡手術です。日本では現在大腸癌の約7割が腹腔鏡手術で行われており、当科でも大腸癌手術の約8割に腹腔鏡手術を行っています(図1)。

図1 大腸手術件数と腹腔鏡手術の割合

腹腔鏡手術は従来の開腹手術と比較して、臓器の微細な構造物を高画質で観察できるため、より精密な手術操作が可能となります(図2)。

図2 腹腔鏡手術での良好な視野

大腸癌は肝臓や肺に転移していてもその転移巣を切除できれば治癒につながる稀有な癌です。たとえ術後に再発したとしても「転移している病変を切除する」ことで長期生存が期待できる場合があります。当院は呼吸器外医が常勤しているため肺転移に対して積極的な切除を行っています。また肝転移に対しても化学療法の併用による集学的治療により積極的な治癒切除を行っています。

 

胃癌について

胃癌治療ガイドラインに基づき、早期胃癌に対しては体に負担の少ない腹腔鏡手術を、進行胃癌に対しては定型手術を行っています。おなかに5mm-1cm程度の穴を数か所あけ、専用のカメラ(腹腔鏡)を挿入しておなかの中の映像を画面に映し、その映像を見ながら手術を行います(図1)。摘出する臓器は開腹手術と同等ですが、腹部の創が小さく、おなかの中の臓器が長時間外界に暴露されないために、開腹手術と比較して術後の痛みや体のダメージが少なく、回復も早いと言われています(図2)。また近年の化学療法の進歩はめざましく、今までは切除不能と考えられていた進行癌でも集学的治療を行うことにより、優れた治療成績を実現しています。GISTと呼ばれる腫瘍に対しても腹腔鏡手術で胃の部分切除を行っています。

【図1 腹腔鏡手術の実際】 【図2 開腹手術と腹腔鏡手術の創】

 

胆膵癌について

(膵癌)
膵癌は画像診断が進歩した現在でも約8割の症例は診断時に遠隔転移や局所進展のため切除の対象とはなりません。そのため早期発見が膵癌治療の向上に不可欠で、当院の消化器内科とも協力し、膵癌治療成績向上を目指し日々努めています。手術は癌の発生部位によって術式が異なります。膵頭部側であれば膵頭十二指腸切除術、膵体尾部であれば膵体尾部切除術を行っています。近年、国内の研究で、切除可能な膵癌でも術前に化学療法を行うことで治療成績が改善するとの報告があり、このような「術前化学療法」にも積極的に取り組んでいます。また主要な血管に半周以下に接していて手術単独では完全には取りきれない可能性の高い切除可能境界膵癌に対しても、術前化学療法を行って主病変を制御したのちに手術を行っています。また、周囲の主要血管に浸潤している局所進行膵癌でも、薬物治療が奏功して取り残すことなく切除可能であれば、積極的に手術を行っています。術後は再発予防のため内服の抗癌剤を用いた補助治療を行っています。

(胆道癌)
膵癌同様根治のためには手術が最も有効です。遠位胆管癌や十二指腸乳頭部癌は膵臓に近接しているため、膵臓の一部を切除する亜全胃温存膵頭十二指腸切除術が選択されます。肝門部胆管癌は肝臓に近接しているため、かなり限局している場合を除き、肝臓の切除も必要になります。胆嚢癌に関しては縮小手術や他臓器合併切除を伴う拡大手術まで幅広い術式を進行度や患者様の状態に応じて選択しています。

 

肝臓癌について

肝臓癌は主に原発性肝癌と転移性肝癌に分類されます。

(原発性肝癌)
主な要因はB型肝炎ウイルスやC型肝炎ウイルスの持続感染です。最近は脂肪肝を伴ったものが増えています。肝臓癌の治療は様々な選択肢があります。肝予備能が許す限りは肝切除を考慮しますが、手術適応とならない場合は消化器内科、放射線科とも連携し、ラジオ波・マイクロ波治療や塞栓療法、化学療法などを検討します。

(転移性肝癌)
他臓器癌の血行性転移によるもので基本的には切除の適応にはなりませんが大腸癌など肝切除を行うことで生命予後の改善が見込める癌もあり、積極的に切除を行います。
 

胆石症・胆嚢炎について

胆石症・胆嚢炎に対する腹腔鏡下胆嚢摘出術は難易度の高い手術ではありませんが、高度な炎症を伴う胆嚢炎や上腹部手術の既往がある場合は腹腔鏡手術の難易度は高く、開腹手術が選択されやすいといわれています(図1.2)。当科では、このような場合も積極的に腹腔鏡手術を行っており、完遂できる割合は95%を超えます。経過が良ければ術後約3日で退院が可能です。

【図1 胆嚢結石症】 【図2胆石性急性胆嚢炎】

 

肛門疾患について

痔核(いぼ痔)、裂肛(切れ痔)、痔瘻、直腸脱といった代表的な肛門疾患をはじめ、様々な肛門疾患の診断と治療を行います。多くは保存的治療(生活習慣の改善や軟膏・座薬の使用)で対応可能です。疼痛や出血、排便困難など日常生活に支障をきたす場合は手術を検討します。多くの場合、数日で退院可能です。

 

鼠経ヘルニアについて

一般的に「脱腸」と呼ばれます。鼠径部(太ももの付け根の部分)が膨らむ病気で、腸やおなかの中の脂肪がおなかの中から飛び出してきている状態です。放置しておくと徐々に大きくなったり、時に痛みが出たり、嵌頓という状態になると膨らみが戻らなくなり、強い痛みが出ることもあります。根本的に治すには手術しか方法がありません。当院では従来から行われてきた鼠径部を切開する方法のほかに、腹腔鏡を用いた手術(TAPP法)を行っています。2つの手術方法の間に明らかな優劣はありませんが、TAPP法ではより小さい創で手術をすることができるほか、より正確な診断も行うことができるというメリットがあります(図1)。しかし全身麻酔が必要なため、依存症の多い方や下腹部の癒着が予想されるような手術を受けた方は困難な場合があります。いずれの方法で手術した場合も術後3日前後で退院することが可能です。

【図1 腹腔内から見た鼠経ヘルニア】 【メッシュを用いたヘルニア修復】

 

虫垂炎について

一般的に「盲腸」と呼ばれる虫垂炎はみぞおちや右下腹部の痛みが特徴的な疾患です。軽症から重症まで様々ですが、手術や保存的治療(抗菌薬治療)、ドレナージ治療など患者様の病態に最も適した治療を選択しています。保存的治療を行った場合では2-4か月後に待機的手術を計画する場合もあります。
従来は右下腹部を切開する手術が一般的でしたが、当院では現在、ほぼ全例小さい創で行える腹腔鏡手術を行っています。創が小さく術後の痛みが少ないため、早くて術後2日前後で退院することが可能です。

 

緩和ケアについて

緩和ケアとは、生命(人生)を脅かす疾患による問題に直面している患者様およびその家族に対して、痛みやその他の身体的問題(日常生活の動きの支障など)、心理社会的問題(不安、いらだち、お金や仕事の問題など)、スピリチュアルな問題(生きる意味への問い、死への恐怖など)に関して適切な評価を行い、それが障害とならないように予防したり対処したりすることで、QOL(人生の質、生活の質)を改善するためのアプローチのことです。当院は緩和ケア病棟・緩和ケアチームを備えており、このような患者様に対しては多職種で連携して緩和ケアを行います。

増加の続く乳癌に対しては、マンモグラフィ、エコー、MRIをはじめとする画像診断、細胞診、針生検、吸引生検が行われ、正確な確定診断と広がり診断が行われます。それに基づいて、乳房温存手術やセンチネルリンパ節生検なども行い、過不足のない手術を行っています。術後補助療法として、あるいは局所進行・転移再発例に対する治療として放射線療法、内分泌療法や化学療法を駆使し、QOLを維持しつつ長期生存できるよう努力を続けています。

 

乳癌同様、細胞診により正確、迅速な診断が可能です。甲状腺癌に対しては手術を行います。

 

手術適応になる疾患は多くはありませんが、ホルモン産生腫瘍や癌に対しては、腹腔鏡手術を行います。

 

診療実績

疾患別件数

疾患 令和5年度(2023)
食道癌 0
胃癌 30(16)
結腸癌 50(41)
直腸癌 24(22)
肝胆膵悪性腫瘍 4
胆石・胆嚢炎 82(79)
乳癌・乳腺腫瘍 31
虫垂炎 42(41)
鼠経ヘルニア 85(46)
その他ヘルニア 14(1)
腸閉塞 29(4)
痔核・痔瘻・肛門疾患 21(1)
直腸脱 8(1)
中心静脈カテーテル留置 68(1)
その他の手術 113(28)
うち緊急手術 145(76)
合計 601(281)

( )内は腹腔鏡手術

 

医師の紹介

外科_栗栖泰郎Dr 栗栖泰郎(横浜市立大学医学部:昭和63年卒業)

浜田医療センター院長

  • 日本外科学会専門医、指導医
  • 日本消化器外科学会専門医、指導医
  • 日本乳癌学会乳腺認定医
  • 日本消化器外科学会消化器がん外科治療認定医
  • 臨床研修指導医
  • 身体障害者福祉法指定医
  • 日本乳がん検診精度管理中央機構検診マンモグラフィ読影認定医

 

外科_高橋節Dr 高橋節(鳥取大学医学部:平成3年卒業)

外科部長

  • 日本外科学会専門医
  • 日本消化器外科学会専門医、指導医
  • 日本静脈経腸栄養学会認定医
  • 産業医
  • 臨床研修指導医
  • 麻酔科標榜医
  • 日本乳がん検診精度管理中央機構検診マンモグラフィ読影認定医

 

外科_渡部裕志Dr 渡部裕志(山口大学医学部:平成6年卒業)

外科医長

  • 日本外科学会専門医
  • 日本消化器外科学会専門医、指導医
  • 日本消化器外科学会消化器がん外科治療認定医
  • 日本がん治療認定医機構がん治療認定医
  • 日本乳がん検診精度管理中央機構検診マンモグラフィ読影認定医
  • 臨床研修指導医

 

外科_永井聡Dr 永井聡(島根医科大学医学部:平成9年卒業)

外科医長

  • 日本外科学会専門医
  • 臨床研修指導医
  • 身体障害者福祉法指定医

 

外科_原和志医師 原和志(島根大学医学部:平成27年卒業)
  • 日本外科学会専門医
  • 日本消化器外科学会専門医

 

No Image 植嶋千尋