令和5年度 浜田医療センター 病院情報の公表

病院指標

  1. 年齢階級別退院患者数
  2. 診断群分類別患者数等(診療科別患者数上位5位まで)
  3. 初発の5大癌のUICC病期分類別並びに再発患者数
  4. 成人市中肺炎の重症度別患者数等
  5. 脳梗塞の患者数等
  6. 診療科別主要手術別患者数等(診療科別患者数上位5位まで)
  7. その他(DIC、敗血症、その他の真菌症および手術・術後の合併症の発生率)

医療の質指標

  1. リスクレベルが「中」以上の手術を施行した患者の肺血栓塞栓症の予防対策の実施率
  2. 血液培養2セット実施率
  3. 広域スペクトル抗菌薬使用時の細菌培養実施率
年齢階級別退院患者数ファイルをダウンロード
年齢区分 0~ 10~ 20~ 30~ 40~ 50~ 60~ 70~ 80~ 90~
患者数 346 81 103 149 210 357 736 1667 1403 624
 令和5年度は、6478名の入院診療を行いました。入院患者さんの平均年齢は65.7歳(男性67.0歳、女性64.4歳)でした。
地域の少子高齢化に伴い、70歳以上の比率は全体の61%と半数以上を占めています。その一方で、当院は浜田医療圏で唯一の周産期医療を担っており、20~30歳代の女性や小児の入院も多いことが特徴です。

 以下に示すデータは、厚生労働省の病院指標データ公表ルールに基づいて集計したものです。
各項目の患者数は、一般病棟に入院された方のみで、保険外診療を含む診療行為を行った入院は除外して集計しております。
また、患者数が10名未満の項目については、公表を控えておりますのでご了承ください。

 今回から新しく、「医療の質指標」を公表することになりました。
医療機関では、行った診療行為を可視化し、その結果を検証して改善することで、患者さんに安心して受診していただけるよう、医療の質を高める努力を行っています。様々な臨床指標の中から3つの項目についてのデータを公表しています。
診断群分類別患者数等(診療科別患者数上位5位まで)ファイルをダウンロード
内科
DPCコード DPC名称 患者数 平均
在院日数
(自院)
平均
在院日数
(全国)
転院率 平均年齢 患者用パス
110310xx99xxxx 腎臓又は尿路の感染症 手術なし 51 22.55 13.52 7.84 83.27
040081xx99x0xx 誤嚥性肺炎 手術なし 手術・処置等2なし 38 33.18 20.60 42.11 83.74
180010x0xxx0xx 敗血症(1歳以上) 手術・処置等2なし 17 27.00 20.03 5.88 80.94
100393xx99xxxx その他の体液・電解質・酸塩基平衡障害 手術なし 16 18.81 10.25 6.25 79.19
180030xxxxxx0x その他の感染症(真菌を除く。) 定義副傷病なし 14 9.29 8.60 0.00 76.14
 当院の診療科ごとに患者数が多かった診断群分類の上位5位までを公表しています。診断群分類(DPC)とは、傷病名・手術・処置・重症度・年齢などの診療情報を細分化し、コード化して分類したものです。

 内科では、診断のついていない発熱、痛み、体重減少、倦怠感、浮腫などの様々な内科系疾患について、各診療科と協力しながら診療を行っています。ほかの診療科と比べて患者さんの平均年齢が高くなっており、急性腎盂腎炎などの尿路感染症、誤嚥性肺炎での入院が多くありました。また、細菌やウイルスの感染症が全身に広がって発症する敗血症や低ナトリウム血症も多く入院診療を行いました。
 高齢の患者さんが多い内科では、食べ物を飲み込む力が低下していたり、別の疾患の治療も行っている患者さんも多くおられるため、平均在院日数が長くなっています。
小児科
DPCコード DPC名称 患者数 平均
在院日数
(自院)
平均
在院日数
(全国)
転院率 平均年齢 患者用パス
140010x199x0xx 妊娠期間短縮、低出産体重に関連する障害(2500g以上) 手術なし 手術・処置等2なし 125 5.79 6.07 0.00 0.00
150040xxxxx0xx 熱性けいれん 手術・処置等2なし 27 3.37 3.56 0.00 2.11
040090xxxxxxxx 急性気管支炎、急性細気管支炎、下気道感染症(その他) 24 4.21 5.96 0.00 0.71
080270xxxx1xxx 食物アレルギー 手術・処置等1あり 22 1.00 2.12 0.00 3.50
040070xxxxx0xx インフルエンザ、ウイルス性肺炎 手術・処置等2なし 17 5.00 5.86 5.88 2.71
 小児科入院で最も多かったのは、昨年度と同じくお母さんの入院中や分娩時に何らかの影響を受け、生まれてすぐ全身状態の管理が必要となる新生児の入院でした。新生児で重症化した場合は、県内の小児集中治療室がある病院と連携し転院して治療が受けられる体制を整えています。
 次に多かったのは、熱性けいれんでの入院や急性気管支炎で、急性気管支炎の入院の中の約7割がRSウイルス気管支炎での入院でした。その他、食物アレルギーの確定診断および治療状況を確認するための負荷試験を行うことを目的とした検査入院、インフルエンザやウイルス性肺炎での入院管理も多く行いました。
外科
DPCコード DPC名称 患者数 平均
在院日数
(自院)
平均
在院日数
(全国)
転院率 平均年齢 患者用パス
060160x001xxxx 鼠径ヘルニア(15歳以上) ヘルニア手術 鼠径ヘルニア等 85 5.46 4.55 0.00 72.12
060035xx010x0x 結腸(虫垂を含む。)の悪性腫瘍 結腸切除術 全切除、亜全切除又は悪性腫瘍手術等 手術・処置等1なし 定義副傷病なし 48 16.38 15.12 0.00 75.94
060335xx02000x 胆嚢炎等 腹腔鏡下胆嚢摘出術等 手術・処置等1なし 手術・処置等2なし 定義副傷病なし 43 8.16 6.87 2.33 68.26
060210xx99000x ヘルニアの記載のない腸閉塞 手術なし 手術・処置等1なし 手術・処置等2なし 定義副傷病なし 41 6.37 8.95 0.00 73.37
060150xx03xxxx 虫垂炎 虫垂切除術 虫垂周囲膿瘍を伴わないもの等 32 4.38 5.29 0.00 39.16
 鼠径ヘルニアの手術入院は、毎年外科で最も多い入院診療です。次いで、結腸の悪性腫瘍に対する手術入院、胆のう炎や胆石症に対する手術入院が多くありました。
 外科では、身体への侵襲が少ない腹腔鏡を使用した手術を積極的に行い、術後の体力低下を低減し、早期回復を目指しています。
 手術以外の入院では、悪性腫瘍の化学療法や病状の進行に応じた緩和治療なども行っています。
 ほとんどの手術入院は、入院治療計画をスケジュール化したクリティカルパスを使用し、在院日数の短縮化や医療の標準化に繋げています。
整形外科
DPCコード DPC名称 患者数 平均
在院日数
(自院)
平均
在院日数
(全国)
転院率 平均年齢 患者用パス
160800xx01xxxx 股関節・大腿近位の骨折 人工骨頭挿入術 肩、股等 161 22.76 25.50 22.98 84.99
070230xx01xxxx 膝関節症(変形性を含む。) 人工関節再置換術等 41 23.85 21.96 0.00 75.32
160760xx97xx0x 前腕の骨折 手術あり 定義副傷病なし 31 5.03 4.76 0.00 63.29
07040xxx01xxxx 股関節骨頭壊死、股関節症(変形性を含む。) 人工関節再置換術等 30 27.87 19.55 0.00 74.60
160740xx01xx0x 肘関節周辺の骨折・脱臼 骨折観血的手術 肩甲骨、上腕、大腿等 定義副傷病なし 17 4.29 5.67 0.00 25.82
 整形外科は、高齢の方の転倒による大腿骨骨折、前腕の骨折、肘関節の骨折による手術入院が多くありました。骨折の他にも、変形性膝関節症や変形性股関節症に対しての人工関節置換術も多く行っています。
 当院には回復期リハビリテーション病棟があり、手術後は在宅復帰に向けて積極的にリハビリテーションを実施しています。また、地域の医療機関と連携して、手術後のリハビリテーションを自宅に近い医療機関へ転院して行っていただけるような体制も整えています。
 また、高齢の方で施設入所中や他病院入院中の転倒で骨折される方も多く、入院治療終了後は介護施設や紹介元の病院に戻られるため、転院率が高くなっています。
脳神経外科
DPCコード DPC名称 患者数 平均
在院日数
(自院)
平均
在院日数
(全国)
転院率 平均年齢 患者用パス
160100xx97x00x 頭蓋・頭蓋内損傷 その他の手術あり 手術・処置等2なし 定義副傷病なし 47 10.43 9.88 10.64 82.64
010060x2990401 脳梗塞(脳卒中発症3日目以内、かつ、JCS10未満) 手術なし 手術・処置等1なし 手術・処置等24あり 定義副傷病なし発症前Rankin Scale 0、1又は2 30 24.20 15.70 10.00 72.13
160100xx99x00x 頭蓋・頭蓋内損傷 手術なし 手術・処置等2なし 定義副傷病なし 25 9.64 8.38 0.00 67.52
010040x099000x 非外傷性頭蓋内血腫(非外傷性硬膜下血腫以外)(JCS10未満) 手術なし 手術・処置等1なし 手術・処置等2なし 定義副傷病なし 22 44.91 19.09 27.27 75.91
010070xx9910xx 脳血管障害 手術なし 手術・処置等1あり 手術・処置等2なし 14 3.21 3.12 0.00 72.79
 脳神経外科は、島根県西部地域で唯一の24時間救急対応可能な脳神経外科として、あらゆる脳神経外科疾患を扱っています。
 前年度同様最も多かったのは、頭部外傷などによる慢性硬膜下血腫の手術入院、次いで脳梗塞でした。頭部外傷による硬膜下血腫は、ご高齢の方の転倒により発症することが多い疾患です。
 脳梗塞は、発症時期や意識障害、合併症、手術などの診療内容によって診断群分類コードが細かく分かれています。その他に、脳振盪などの頭部外傷や脳出血、脳動脈瘤の検査入院も多くなっています。
 脳血管疾患は、急性期治療後、早期にリハビリテーションを開始しますが、機能回復までに長期的なリハビリテーションや療養が必要となります。在宅復帰が困難であったり、患者さんのご自宅に近い医療機関での治療を希望される場合は、転院して治療を受けていただけるよう連携を図っています。
呼吸器外科
DPCコード DPC名称 患者数 平均
在院日数
(自院)
平均
在院日数
(全国)
転院率 平均年齢 患者用パス
040040xx97x00x 肺の悪性腫瘍 その他の手術あり 手術・処置等2なし 定義副傷病なし 39 9.79 9.89 2.56 74.90
040200xx99x00x 気胸 手術なし 手術・処置等2なし 定義副傷病なし 9.17
160450xx99x10x 肺・胸部気管・気管支損傷 手術なし 手術・処置等2あり 定義副傷病なし 10.81
040150xx97x00x 肺・縦隔の感染、膿瘍形成 手術あり 手術・処置等2なし 定義副傷病なし 28.24
040200xx01x00x 気胸 肺切除術等 手術・処置等2なし 定義副傷病なし 9.54
 呼吸の際の空気の通り道である気管支、ガス交換の場である肺胞の細胞が、がん化して起こる病気が肺がんです。肺がんには手術、放射線治療、薬物療法などの治療法があり、肺がんの種類(非小細胞がん、小細胞がん)、がんの広がり具合(ステージ)を考慮した上で、最適な治療法を選択します。呼吸器外科では、肺がんに対する手術を最も多く行いました。入院管理には、入院治療計画をスケジュール化した患者用パスを活用しており、平均在院日数も令和3年度:15.91日 → 令和4年度:11.24日 → 令和5年度:9.79日と年々短縮しています。
 このほか、肺の一部に小さな穴があき、そこから空気が漏れたために、肺全体がしぼんでしまう気胸に対する手術なども多く行っています。
心臓血管外科
DPCコード DPC名称 患者数 平均
在院日数
(自院)
平均
在院日数
(全国)
転院率 平均年齢 患者用パス
050180xx02xxxx 静脈・リンパ管疾患 下肢静脈瘤手術等 33 3.00 2.61 0.00 69.33
110280xx02x00x 慢性腎炎症候群・慢性間質性腎炎・慢性腎不全 動脈形成術、吻合術 その他の動脈等 手術・処置等2なし 定義副傷病なし 17 9.53 7.57 5.88 74.06
050163xx03x0xx 非破裂性大動脈瘤、腸骨動脈瘤 ステントグラフト内挿術 手術・処置等2なし 16 10.00 10.42 6.25 74.44
050170xx03000x 閉塞性動脈疾患 動脈塞栓除去術 その他のもの(観血的なもの)等 手術・処置等1なし、1あり 手術・処置等2なし 定義副傷病なし 10 10.70 5.21 10.00 78.80
050161xx9900xx 大動脈解離 手術なし 手術・処置等1なし 手術・処置等2なし 16.49
 下肢静脈瘤とは、下肢の静脈内を流れる血液が逆流して下肢に血液が停滞し、下肢の血管が浮き出て目立つようになる疾患です。心臓血管外科では、この下肢静脈瘤に対するカテーテルによる焼灼術を最も多く行いました。この手術によって、静脈瘤の縮小や下肢の”むくみ”や”だるさ”を軽快する効果が得られます。入院管理には、入院期間をスケジュール化した患者用パスを活用して、入院期間の短縮化に取り組んでおり、平均在院日数は3日間となっております。
 また、腎臓のはたらきが悪くなり、その機能を補うために血液透析療法を行う患者さんに対して、内シャント設置術も多く行っています。
 このほか、狭心症や心筋梗塞などの虚血性心疾患、大動脈弁狭窄症などの弁膜症、大動脈瘤や大動脈解離などの大動脈疾患といった非常に緊急性の高い疾患に対する手術療法も多く行っています。
産婦人科
DPCコード DPC名称 患者数 平均
在院日数
(自院)
平均
在院日数
(全国)
転院率 平均年齢 患者用パス
120140xxxxxxxx 流産 30 1.03 2.43 0.00 32.83
120170x199xxxx 早産、切迫早産(妊娠週数34週未満) 手術なし 26 16.73 20.10 23.08 29.08
12002xxx02x0xx 子宮頸・体部の悪性腫瘍 子宮頸部(腟部)切除術等 手術・処置等2なし 14 3.43 2.96 0.00 39.93
120165xx99xxxx 妊娠合併症等 手術なし 11 19.09 10.56 0.00 29.18
120060xx01xxxx 子宮の良性腫瘍 子宮全摘術等 10 8.60 9.23 0.00 44.60
 産婦人科で最も多かったのは、昨年度と同じく自然流産での入院でした。妊婦健診や分娩を取り扱う医療機関が減少しているため、妊娠期間中の切迫流産や切迫早産での入院や、妊娠悪阻(つわり)などの妊娠合併症での入院管理が増えています。
 その他に、婦人科系疾患である子宮の悪性腫瘍や子宮筋腫に対する手術入院も多く行いました。手術目的での入院は、治療計画をスケジュール化した患者用パスを使用して入院管理を行っています。
 なお、自然分娩や帝王切開による分娩は、保険外診療が含まれるため、病院指標データからは除外しています。令和5年度に当院で出産された方は349名で、前年度の306名から増加しました。
皮膚科
DPCコード DPC名称 患者数 平均
在院日数
(自院)
平均
在院日数
(全国)
転院率 平均年齢 患者用パス
080007xx010xxx 皮膚の良性新生物 皮膚、皮下腫瘍摘出術(露出部)等 手術・処置等1なし 3.93
080010xxxx0xxx 膿皮症 手術・処置等1なし 12.88
080006xx01x0xx 皮膚の悪性腫瘍(黒色腫以外) 皮膚悪性腫瘍切除術等 手術・処置等2なし 7.22
080190xxxxxxxx 脱毛症 3.31
 皮膚科は、可能であれば外来での手術も行っています。令和5年度は、皮膚の良性腫瘍・悪性腫瘍の手術入院や、蜂窩織炎の治療入院、脱毛症の治療入院を多く行いました。
泌尿器科
DPCコード DPC名称 患者数 平均
在院日数
(自院)
平均
在院日数
(全国)
転院率 平均年齢 患者用パス
110080xx991xxx 前立腺の悪性腫瘍 手術なし 手術・処置等1あり 59 2.08 2.44 0.00 75.73
110070xx03x0xx 膀胱腫瘍 膀胱悪性腫瘍手術 経尿道的手術 手術・処置等2なし 28 10.61 6.85 0.00 78.21
11012xxx03xxxx 上部尿路疾患 体外衝撃波腎・尿管結石破砕術(一連につき) 26 2.77 2.43 0.00 63.58
110310xx99xxxx 腎臓又は尿路の感染症 手術なし 26 25.38 13.52 15.38 78.46
110420xx02xxxx 水腎症等 経尿道的尿管ステント留置術等 18 8.72 4.02 0.00 74.00
 血液検査で前立腺腫瘍マーカー(PSA値)が高く、前立腺癌の疑いがある場合、最終的な診断のために前立腺針生検を行います。泌尿器科では、この検査目的の入院が最も多く、検査により診断を確定し、癌の進行の程度や体の状態などから最適な治療法を検討していきます。そして、膀胱癌や尿路結石症に対する手術も多く行っており、これらの入院管理には、入院治療計画をスケジュール化した患者用パスを活用することで、入院期間の短縮化や医療の標準化に繋げております。
 このほか、急性腎盂腎炎に対する抗生剤治療、さらには急性腎盂腎炎から敗血症(細菌などが血液中に侵入し、全身的な反応、臓器障害などを引き起こしている状態)を併発した重症な病態の患者さんの入院診療も多く行っています。
呼吸器内科
DPCコード DPC名称 患者数 平均
在院日数
(自院)
平均
在院日数
(全国)
転院率 平均年齢 患者用パス
040081xx99x0xx 誤嚥性肺炎 手術なし 手術・処置等2なし 78 26.76 20.60 17.95 86.29
040040xx99200x 肺の悪性腫瘍 手術なし 手術・処置等12あり 手術・処置等2なし 定義副傷病なし 56 2.05 2.98 0.00 75.20
040110xxxxx0xx 間質性肺炎 手術・処置等2なし 50 24.40 18.65 10.00 81.50
040040xx9900xx 肺の悪性腫瘍 手術なし 手術・処置等1なし 手術・処置等2なし 29 25.66 13.59 6.90 80.07
040040xx99040x 肺の悪性腫瘍 手術なし 手術・処置等1なし 手術・処置等24あり 定義副傷病なし 29 12.66 8.33 3.45 70.14
 呼吸器内科は、肺や気管支、肺まわりの胸膜など呼吸に関わる臓器の病気を治療している内科です。当院の呼吸器内科は島根県西部唯一の日本呼吸器学会認定施設として、良質な呼吸器医療を提供できるよう日々診療を行っています。
 長年、肺癌の確定診断のための検査入院が多くありましたが、令和5年度は高齢者に多い誤嚥性肺炎の入院診療を最も多く行いました。誤嚥性肺炎は、嚥下機能の低下によって発症する疾患で、ご高齢の方に多く発症します。そのため、在院日数も長くなっています。次に多かった疾患は肺癌の検査入院でした。
 その他に、炎症のために肺が線維化して硬くなり、咳や酸素欠乏による息切れが生じる間質性肺炎や肺癌の化学療法の入院診療も多く行いました。
誤嚥性肺炎だけでなく、呼吸器内科は高齢の方が多く、感染症などを合併して重症化することもあり、入院が長期化する傾向にあります。
循環器内科
DPCコード DPC名称 患者数 平均
在院日数
(自院)
平均
在院日数
(全国)
転院率 平均年齢 患者用パス
050050xx0200xx 狭心症、慢性虚血性心疾患 経皮的冠動脈形成術等 手術・処置等1なし、1,2あり 手術・処置等2なし 95 4.55 4.26 3.16 70.53
050070xx01x0xx 頻脈性不整脈 経皮的カテーテル心筋焼灼術 手術・処置等2なし 69 3.32 4.57 0.00 68.12
050050xx9910x0 狭心症、慢性虚血性心疾患 手術なし 手術・処置等11あり 手術・処置等2なし他の病院・診療所の病棟からの転院以外 51 2.20 3.05 0.00 70.43
050130xx9900x0 心不全 手術なし 手術・処置等1なし 手術・処置等2なし他の病院・診療所の病棟からの転院以外 51 21.94 17.38 7.84 88.78
050210xx97000x 徐脈性不整脈 手術あり 手術・処置等1なし、1,3あり 手術・処置等2なし 定義副傷病なし 51 9.67 9.77 1.96 83.90
 循環器内科は、狭心症や心筋梗塞に対するカテーテル治療を多く行いました。カテーテル治療は、薬物療法に比べ治療効果が高く、外科手術に比べ体への負担が少ないことが大きなメリットです。また、心臓が正常に拍動しない不整脈に対するカテーテルアブレーション治療も多く行っています。この治療法は、不整脈の原因となる個所をアブレーション(焼灼)して、不整脈が起きないようにする、根治を目的とした治療です。このほか、心不全に対する薬物療法も多く行っています。
 入院管理には、入院期間をスケジュール化した患者用パスを活用して、入院期間の短縮化に取り組んでおり、狭心症や心筋梗塞に対するカテーテル治療や不整脈に対するカテーテルアブレーション治療の入院期間は2~3日程度となっています。
腎臓内科
DPCコード DPC名称 患者数 平均
在院日数
(自院)
平均
在院日数
(全国)
転院率 平均年齢 患者用パス
110270xx99x0xx 急速進行性腎炎症候群 手術なし 手術・処置等2なし 20 4.20 14.47 5.00 58.70
110280xx9900xx 慢性腎炎症候群・慢性間質性腎炎・慢性腎不全 手術なし 手術・処置等1なし 手術・処置等2なし 13 18.31 11.49 7.69 59.85
11012xxx99xxxx 上部尿路疾患 手術なし 7.92
110280xx03x10x 慢性腎炎症候群・慢性間質性腎炎・慢性腎不全 内シャント血栓除去術等 手術・処置等21あり 定義副傷病なし 16.99
110280xx02x00x 慢性腎炎症候群・慢性間質性腎炎・慢性腎不全 動脈形成術、吻合術 その他の動脈等 手術・処置等2なし 定義副傷病なし 7.57
 当院は島根県西部で腎臓内科医が在籍している唯一の総合病院です。
 前年度に引き続き最も患者数が多かったのは、糸球体腎炎やネフローゼ症候群など、様々な腎疾患の確定診断のための経皮的腎生検の検査入院でした。次に多かったのは、IgA腎症などの自己免疫性疾患に対してステロイドパルス療法を行う入院でした。そのほかに、急性腎障害や慢性腎不全に対する透析シャント狭窄・閉塞のため、経皮的シャント拡張術・血栓除去術での入院や、慢性腎不全に対して末梢動脈瘻造設術(内シャント造設術)のための入院もありました。
 当院では慢性腎臓病に関しては、初期の腎障害から透析導入や透析シャントトラブルにも対応しています。当院に転院して手術を受けられ、治療後に再度地域の医療機関へ戻られることも多くあります。
消化器内科
DPCコード DPC名称 患者数 平均
在院日数
(自院)
平均
在院日数
(全国)
転院率 平均年齢 患者用パス
060340xx03x00x 胆管(肝内外)結石、胆管炎 限局性腹腔膿瘍手術等 手術・処置等2なし 定義副傷病なし 104 10.20 8.75 3.85 78.84
060020xx04xxxx 胃の悪性腫瘍 内視鏡的胃、十二指腸ポリープ・粘膜切除術 46 8.85 7.61 0.00 78.09
060050xx030xxx 肝・肝内胆管の悪性腫瘍(続発性を含む。) 肝悪性腫瘍ラジオ波焼灼療法(一連として)等 手術・処置等1なし 32 7.34 7.38 0.00 74.66
060050xx97x0xx 肝・肝内胆管の悪性腫瘍(続発性を含む。) その他の手術あり 手術・処置等2なし 25 13.60 10.24 4.00 79.00
06007xxx9900xx 膵臓、脾臓の腫瘍 手術なし 手術・処置等1なし 手術・処置等2なし 24 24.63 11.07 4.17 74.79
 消化器内科で最も多かったのは、胆管結石、胆管炎などの胆管疾患に対して内視鏡を使用した治療を行う入院でした。胆管疾患は症状が繰り返すことで入院が必要なことが多く、毎年消化器内科で最も多くなっています。
 2位以降は、消化器系悪性腫瘍の入院診療です。特に肝・肝内胆管の悪性腫瘍の入院患者数が前年度から大幅に増加しました。放射線科などと連携し、腫瘍縮小を目的とした治療を積極的に行っています。
 地域の医療機関からの紹介も多く、外科と連携して消化器系疾患全般の診療を行っています。
内分泌・代謝内科
DPCコード DPC名称 患者数 平均
在院日数
(自院)
平均
在院日数
(全国)
転院率 平均年齢 患者用パス
110310xx99xxxx 腎臓又は尿路の感染症 手術なし 13 31.62 13.52 7.69 82.08
040081xx99x0xx 誤嚥性肺炎 手術なし 手術・処置等2なし 20.60
10007xxxxxx1xx 2型糖尿病(糖尿病性ケトアシドーシスを除く。) 手術・処置等21あり 13.99
100393xx99xxxx その他の体液・電解質・酸塩基平衡障害 手術なし 10.25
100040xxxxx00x 糖尿病性ケトアシドーシス、非ケトン昏睡 手術・処置等2なし 定義副傷病なし 13.15
 内分泌・代謝内科は、内分泌臓器である甲状腺・副腎・下垂体の疾患などの内分泌疾患や、脂質異常・骨代謝異常などの代謝疾患を中心に診療を行っています。感染症などの内科系疾患についても、内科(総合診療科)などと連携しながら入院診療を行っています。
 令和5年度は、前年度と同じく急性腎盂腎炎などの尿路感染症や誤嚥性肺炎の入院が多くありました。また、2型糖尿病の治療や低ナトリウム血症に対する入院診療も行っています。
 その他、別疾患の治療のために入院された患者さんの中には、継続して糖尿病治療が必要な方もおられます。他診療科と連携しながら入院管理を行っています。
初発の5大癌のUICC病期分類別並びに再発患者数ファイルをダウンロード
初発 再発 病期分類
基準(※)
版数
Stage I Stage II Stage III Stage IV 不明
胃癌 60 14 18 15 1 8
大腸癌 51 27 36 33 54 1 8
乳癌 15 24 14 27 1 8
肺癌 44 12 18 32 31 1 8
肝癌 14 44 1 8
※ 1:UICC TNM分類,2:癌取扱い規約
 癌の進行度を判定する基準として国際的に活用されている分類法の「UICC病期分類」を用いて、代表的な5つの癌の初回治療開始前の進行状況をⅠ~ⅣまでのStageごとに患者数を集計しています。「初発」とは当院において癌の診断をした場合、あるいは当院において手術や化学療法などの初回治療を実施した場合を指します。一方、「再発」とは当院、他院を問わず初回治療が完了した後、当院で患者を診療した場合、あるいは、再発や転移をきたした場合を指します。

<胃癌>
 胃癌は大きくなるにしたがい、粘膜層、粘膜下層、固有筋層、漿膜へと外側に深く進んでいきます。これらの癌の進行度や体の状態などを考慮した上で、最適な治療法を検討していきます。当院ではステージⅠの患者数が60名と最も多くなっており、これは粘膜層または粘膜下層までにとどまる早期癌であり、早期発見・早期治療が行われていることを示しています。癌が粘膜層にとどまり、リンパ節転移や遠隔転移がない場合は、消化器内科入院で、内視鏡治療が中心となります。外科手術に比べ、体に対する負担が少なく、癌の切除後も胃が残るため、食生活への影響が少ない治療法です。癌が進行しており、内視鏡治療による切除が難しい場合には、外科入院で、腹腔鏡手術を行います。この手術は開腹手術に比べ、小さな傷跡で済み、痛みも少なく、術後の回復が早いため、早期退院、早期社会復帰が可能です。

<大腸癌>
 大腸癌の検査には手軽にできる便潜血検査があり、2日間の便潜血検査でいずれか1回でも「陽性」と判定された場合には、大腸癌の可能性があるため、消化器内科で大腸内視鏡検査を行い、診断を確定します。治療法には内視鏡手術、外科手術、放射線療法、化学療法があり、病期によって適切な治療法が選択されます。当院で最も症例数が多いのはステージⅠですが、ステージⅠのうち大腸の壁への浸潤が浅いものに対しては、消化器内科入院で、内視鏡治療を行います。外科手術とはちがい、お腹に傷がつかないという利点があります。また、身体への負担が少なく、短期間の入院で行える治療法です。大腸の壁への浸潤が深く、内視鏡治療での切除が難しい場合には、外科手術を行います。胃癌同様、大腸癌に対しても患者さんの身体への負担が少ない、腹腔鏡手術を積極的に行っております。

<乳癌>
 乳癌の検査には、視診、触診、マンモグラフィ、超音波検査があり、さらに、乳癌の可能性がある場合は、病理検査(病変の一部を採取して顕微鏡で調べ、癌の有無などを診断する検査)も行い、診断を確定させます。当院では非常勤医師による乳腺科外来が月曜日と水曜日の週2回あり、これらの検査を実施しております。検査の結果、治療が必要となった場合には、外科の医師が担当することになります。乳癌の治療には手術、放射線治療、薬物療法があり、癌の進行の程度や患者さんの体の状態などを考慮し、検討した上で、最適な治療法を選択していきます。

<肺癌>
 肺癌は早期には症状が見られないことも多く、進行して初めて症状がでることもあり、当院もステージⅣの患者数は多くなっています。しかし、当院には健診センターが併設されており、肺癌に対する検診も積極的に実施し、早期発見・早期治療へ繋げています。肺癌が疑われた場合には、呼吸器内科入院で気管支鏡検査や経皮的針生検を行い、診断を確定します。その後、癌の治療法として手術が選択された場合には、呼吸器外科入院で胸腔鏡手術を行います。このように肺癌は、呼吸器内科と呼吸器外科の2つの診療科で連携を図りながら、治療にあたっています。

<肝癌>
 当院で多く行っている治療法は3つあり、①ラジオ波焼灼療法(腹部の皮膚の上から特殊な針を癌に直接刺し、通電して針の先端部分に高熱を発生させることで、局所的に癌を焼いて死滅させる治療法)、②肝動脈化学塞栓療法(肝癌に栄養を送る動脈に薬剤を注入して血流を塞ぎ、癌を死滅させる治療法)、③マイクロ波凝固法(マイクロ波を発生させ、その振動で熱を発生させて、癌を凝固、死滅させる治療法)になります。
肝癌は再発を起こしやすい癌であることが知られています。慢性肝炎や肝硬変といった癌になりうる病態が改善されない限り再発を繰り返します。当院では再発症例に対する入院治療も多く行っているため、再発患者数は多くなっています。
成人市中肺炎の重症度別患者数等ファイルをダウンロード
患者数 平均
在院日数
平均年齢
軽症
中等症 19 20.37 82.21
重症 10 16.90 81.90
超重症 11 29.36 81.91
不明
 「市中肺炎」とは、日常生活の中で細菌やウイルスに感染することで発症する肺炎です。入院中に発症する「院内肺炎」や嚥下機能障害によって起こる「誤嚥性肺炎」は患者数に含まれていません。
 15歳以上の市中肺炎を入院時の年齢・血液検査数値・酸素濃度・意識状態・血圧などの項目をもとに重症度を示しています。
 令和5年度は軽症が少なく、中等度~超重症の患者さんを多く診療しました。そのため、平均在院日数も長くなっています。肺炎はご高齢の方ほど重症化する傾向にあります。
脳梗塞の患者数等ファイルをダウンロード
発症日から 患者数 平均在院日数 平均年齢 転院率
3日以内 155 39.66 78.63 16.46
その他
 脳梗塞の患者数は昨年度より減少しましたが、多くの脳梗塞治療を当院で行っており、令和5年度は年間155名の患者さんが脳梗塞で入院診療を行いました。男女比では、男性52%、女性48%とやや男性が多くなっています。
 「発症から3日以内」の症例が93%を占めており、適応がある場合には、血栓回収術や血栓溶解療法(rt-PA(アルテプラーゼ)療法)などの急性期治療を行っています。
 脳梗塞は、早期にリハビリテーションを実施することで、麻痺症状や構音障害などの機能回復を図り、在宅復帰できるよう入院管理を行います。長期間リハビリテーションを必要とする方には、当院の回復期リハビリテーション病棟で継続して実施したり、地域の病院に転院してリハビリテーションを行えるような連携体制を整えています。
診療科別主要手術別患者数等(診療科別患者数上位5位まで)ファイルをダウンロード
小児科
Kコード 名称 患者数 平均
術前日数
平均
術後日数
転院率 平均年齢 患者用パス
K3691 咽頭異物摘出術 簡単なもの
K7151 腸重積症整復術 非観血的なもの
K9132 新生児仮死蘇生術 仮死第2度のもの
 小児科で行った手術は、患者数が10名未満のため詳細なデータは掲載していませんが、異物を誤飲したときに内視鏡で取り除く手術や、腸重積症の非観血的に行う整復術、出産直後の呼吸や循環が良くない場合に行う新生児仮死蘇生術を行いました。
外科
Kコード 名称 患者数 平均
術前日数
平均
術後日数
転院率 平均年齢 患者用パス
K672-2 腹腔鏡下胆嚢摘出術 78 2.94 6.51 3.85 67.74
K634 腹腔鏡下鼠径ヘルニア手術(両側) 53 1.00 3.28 0.00 68.23
K719-3 腹腔鏡下結腸悪性腫瘍切除術 52 2.85 12.98 0.00 75.90
K6113 抗悪性腫瘍剤動脈、静脈又は腹腔内持続注入用植込型カテーテル設置 頭頸部その他に設置した場合 36 1.50 3.67 0.00 66.50
K6335 ヘルニア手術 鼠径ヘルニア 34 0.82 3.94 0.00 77.68
 上位5位までは、毎年実施件数が多い手術です。特に腹腔鏡下胆嚢摘出術は、令和5年度当院で行った手術で3番目に多かった手術です。悪性腫瘍手術を中心に、開腹手術から身体への侵襲が少ない腹腔鏡手術を積極的に行っています。
 4位の手術は、悪性腫瘍に対して抗悪性腫瘍薬を持続的に注入するためのチューブやカテーテルを設置する手術です。このほか、痔核切除術、乳房の悪性腫瘍手術も行っています。
 近隣医療機関の外科が縮小している中で、当院が担う役割は大きくなっています。
整形外科
Kコード 名称 患者数 平均
術前日数
平均
術後日数
転院率 平均年齢 患者用パス
K0461 骨折観血的手術 肩甲骨、上腕、大腿 128 0.87 18.48 19.53 83.62
K0821 人工関節置換術 肩、股、膝 77 1.23 22.92 0.00 74.32
K0811 人工骨頭挿入術 肩、股 46 1.26 22.46 30.43 83.39
K0462 骨折観血的手術 前腕、下腿、手舟状骨 25 2.80 10.04 8.00 59.08
K142-8 顕微鏡下腰部脊柱管拡大減圧術 25 1.56 11.80 8.00 73.24
 整形外科では、大腿骨や上腕骨の骨折に対しての骨接合術を多く行いました。骨折観血的手術は、令和5年度に当院で実施した手術の中で最も多い手術です。骨折の整復には、固定具で固定したり、股関節に近い部分には人工骨頭を挿入して整復を行います。
 加齢などから膝の軟骨がすり減り、膝に強い痛みを生じる変形性膝関節症や、軟骨の消耗などにより骨盤が変形して痛みや体動困難が生じる変形性股関節症に対しての人工関節置換術も多く行っています。
 また、腰部脊柱管狭窄症や腰椎椎間板ヘルニアなどの脊椎疾患に対しては、手術用顕微鏡を用いた低侵襲な手術を行っています。
手術はほとんどが入院後2日以内に行っていますが、在宅復帰に向けてのリハビリテーション実施の期間が含まれるため、平均術後日数は20日前後となっています。
 当院は、近隣の医療機関からの紹介で手術を実施し、紹介元の医療機関で手術後の入院管理を行えるような連携体制も整えています。
脳神経外科
Kコード 名称 患者数 平均
術前日数
平均
術後日数
転院率 平均年齢 患者用パス
K164-2 慢性硬膜下血腫穿孔洗浄術 39 0.59 12.15 15.38 84.18
K178-4 経皮的脳血栓回収術 28 0.21 45.46 42.86 84.39
K1771 脳動脈瘤頸部クリッピング 1箇所 13 0.54 52.85 7.69 71.15
K609-2 経皮的頸動脈ステント留置術 11 13.45 40.91 18.18 72.91
K1692 頭蓋内腫瘍摘出術 その他のもの
 脳神経外科の当院の手術件数は、年々増加しています。最も多かった手術は、頭部外傷などにより硬膜下にできた血腫を取り除く慢性硬膜下血腫穿孔洗浄術でした。次に多かった手術は、脳梗塞の一つである心原性脳塞栓症に対して行った経皮的脳血栓回収術で、令和5年度は前年度と同じく28件実施しています。
 また、くも膜下出血や脳動脈瘤に対して行う脳動脈瘤頸部クリッピング術や、脳梗塞や頸動脈狭窄症に対して行う経皮的頸動脈ステント留置術、脳腫瘍に対する頭蓋内腫瘍摘出術も行っています。
 脳血管疾患は、自宅や介護施設への退院が困難な方も多く、療養型の病院へ転院して治療を継続されたり、他院から手術目的で紹介され、手術を実施した後に紹介元の病院へ戻られることも多いため、転院率が高くなっています。
呼吸器外科
Kコード 名称 患者数 平均
術前日数
平均
術後日数
転院率 平均年齢 患者用パス
K514-23 胸腔鏡下肺悪性腫瘍手術 肺葉切除又は1肺葉を超えるもの 19 1.00 8.26 5.26 73.58
K514-21 胸腔鏡下肺悪性腫瘍手術 部分切除 14 1.00 9.14 0.00 77.36
K496-2 胸腔鏡下醸膿胸膜又は胸膜胼胝切除術
K5131 胸腔鏡下肺切除術 肺嚢胞手術(楔状部分切除によるもの)
K514-22 胸腔鏡下肺悪性腫瘍手術 区域切除
 呼吸器外科では、肺がんの手術を最も多く行いました。手術の種類は切除する範囲によって分けられ、片側肺全摘、肺葉切除、区域切除、部分切除の順に切除範囲が小さくなり、手術による体の負担も小さくなります。どの程度肺を切除するかは、病状や体の状態をみながら検討し、最適な手術方法を決定していきます。
 このほか、膿胸や気胸に対する手術療法も多く行っております。これらの手術は胸腔鏡手術のため、開胸手術に比べ、傷口が小さい、痛みが少ない、傷跡が目立ちにくい、手術後の回復が早いなどの多くのメリットがあります。また、令和6年には、胸腔鏡手術機器を整備し、より安心安全で質の高い手術ができるようになっています。
心臓血管外科
Kコード 名称 患者数 平均
術前日数
平均
術後日数
転院率 平均年齢 患者用パス
K617-4 下肢静脈瘤血管内焼灼術 30 1.00 1.03 0.00 69.47
K6121イ 末梢動静脈瘻造設術 内シャント造設術 単純なもの 20 3.50 11.95 10.00 74.80
K5612ロ ステントグラフト内挿術 1以外の場合 腹部大動脈 14 2.14 7.86 7.14 75.86
K6082 動脈塞栓除去術 その他のもの(観血的なもの)
K6093 動脈血栓内膜摘出術 その他のもの
 心臓血管外科では、下肢静脈瘤に対するカテーテルによる焼灼術(血管内の弁が壊れたために血液が逆流している静脈を焼いてふさいでしまう治療法)を最も多く行いました。この治療法は、皮膚切開が小さくてすみ、麻酔が軽くすむ利点があります。次に多いのが、血液透析療法を行う患者さんに対して実施する内シャント造設術です。シャントとは、動脈と静脈をつなぎあわせて作った血管のことで、シャントを作ることで十分な血液を確保できるようになります。
 このほか、狭心症や心筋梗塞に対する冠動脈バイパス術、大動脈弁狭窄症に対する弁置換術、大動脈解離に対する大動脈瘤切除術、大動脈瘤に対するステントグラフト内挿術なども行っており、非常に危険性の高い疾患にも対応しております。
産婦人科
Kコード 名称 患者数 平均
術前日数
平均
術後日数
転院率 平均年齢 患者用パス
K9091イ 流産手術 妊娠11週までの場合 手動真空吸引法によるもの 26 0.00 0.00 0.00 32.69
K867 子宮頸部(腟部)切除術 14 1.43 1.00 0.00 39.29
K877 子宮全摘術 14 1.50 6.36 0.00 58.29
K8882 子宮附属器腫瘍摘出術(両側) 腹腔鏡によるもの 11 1.00 4.82 0.00 52.73
K8881 子宮附属器腫瘍摘出術(両側) 開腹によるもの
 産婦人科では、自然流産に対しての流産手術を最も多く行いました。婦人科系の疾患の手術では、子宮頸部の悪性腫瘍に対して行う子宮頸部切除術や子宮筋腫に対して行う子宮全摘術、卵巣腫瘍などに対して行う子宮附属器腫瘍摘出術を多く行いました。子宮付属器腫瘍摘出術では、開腹による手術もありますが、多くが腹腔鏡による手術を行っています。
 産婦人科での手術入院は、治療計画をスケジュール化した患者用パスを使用して入院管理を行っているため、入院期間の短縮化や標準化に繋がっています。
なお、自然分娩や帝王切開による分娩は、保険外診療が含まれるため、病院指標データから除外しています。
皮膚科
Kコード 名称 患者数 平均
術前日数
平均
術後日数
転院率 平均年齢 患者用パス
K0062 皮膚、皮下腫瘍摘出術(露出部以外) 長径3cm以上6cm未満
K0072 皮膚悪性腫瘍切除術 単純切除
K0061 皮膚、皮下腫瘍摘出術(露出部以外) 長径3cm未満
 皮膚科は、外来診療を多く行いました。
 入院で行った手術は、患者数が10名未満のため詳細なデータは掲載していませんが、皮膚の良性腫瘍・悪性腫瘍に対しての腫瘍摘出術や腫瘍切除術を行いました。
泌尿器科
Kコード 名称 患者数 平均
術前日数
平均
術後日数
転院率 平均年齢 患者用パス
K8036イ 膀胱悪性腫瘍手術 経尿道的手術 電解質溶液利用のもの 39 1.85 7.18 0.00 78.62
K783-2 経尿道的尿管ステント留置術 35 2.14 8.14 2.86 75.71
K768 体外衝撃波腎・尿管結石破砕術(一連につき) 24 0.50 1.13 0.00 62.75
K7811 経尿道的尿路結石除去術 レーザーによるもの
K7981 膀胱結石、異物摘出術 経尿道的手術
 泌尿器科では、主に3つの手術症例数が多くなっています。
 1つ目が膀胱癌に対する「経尿道的膀胱腫瘍切除術」です。この手術は、尿道から膀胱内に内視鏡を挿入し、がんを電気メスで切除する治療法で、検査も兼ねて行います。膀胱癌は膀胱内の同一部位や膀胱内の他の部位に再発しやすいという特徴があるため、複数回手術を受けられる患者さんもおられます。
 2つ目は、水腎症(尿管が狭く、腎臓に尿が溜まってしまう病気)に対して行う、「経尿道的尿管ステント留置術」です。この手術は、尿管が塞がらないように小さい金属製の筒(ステント)を留置します。
 3つ目が、尿路結石に対して行う、「体外衝撃波結石破砕術」です。この手術は、体外の装置を用いて尿路結石を細かく破砕し、破砕片が尿と一緒に自然に排泄されるのを期待する治療法です。結石の種類、大きさ、硬さにより手術の回数が異なりますが、平均2~3回の手術が必要です。
循環器内科
Kコード 名称 患者数 平均
術前日数
平均
術後日数
転院率 平均年齢 患者用パス
K5951 経皮的カテーテル心筋焼灼術 心房中隔穿刺又は心外膜アプローチを伴うもの 67 0.97 1.37 0.00 68.10
K5493 経皮的冠動脈ステント留置術 その他のもの 48 4.69 3.42 4.17 72.02
K5972 ペースメーカー移植術 経静脈電極の場合 42 3.29 9.07 4.76 80.86
K5463 経皮的冠動脈形成術 その他のもの 39 0.51 2.18 0.00 71.64
K5491 経皮的冠動脈ステント留置術 急性心筋梗塞に対するもの 23 0.00 24.09 13.04 72.43
 循環器内科は、不整脈に対するカテーテルアブレーション治療を最も多く行いました。これは、カテーテルを太ももの付け根から血管を通じて心臓に挿入し、不整脈の原因部位を焼灼する治療法で、2泊3日の入院で行います。さらに、心臓の周りの動脈が狭くなることで発症する狭心症や心筋梗塞に対するカテーテル治療も多く行っています。治療法は、狭くなっている部分を風船(バルーン)で膨らませて、血液の流れを良くする「経皮的冠動脈形成術(風船治療)」と、小さいメッシュ状の金属の筒(ステント)を冠動脈内に留置して、血管を保持し、再閉塞を予防する「経皮的冠動脈ステント留置術(ステント治療)」が多く行われています。
 このほか、洞不全症候群や房室ブロックに対するペースメーカ移植術、下肢閉塞性動脈硬化症に対するカテーテルを用いた血管内治療なども多く行っています。
腎臓内科
Kコード 名称 患者数 平均
術前日数
平均
術後日数
転院率 平均年齢 患者用パス
K6121イ 末梢動静脈瘻造設術 内シャント造設術 単純なもの
K616-41 経皮的シャント拡張術・血栓除去術 初回
K608-3 内シャント血栓除去術
 腎臓内科では、慢性腎不全の患者さんに対して、透析導入に必要な末梢動静脈瘻造設術(内シャント造設術)を最も多く行いました。また、慢性腎不全で透析中の患者さんのシャントトラブルなどに対する経皮的シャント拡張術や血栓除去術も多く行っています。その他に透析シャントの血栓除去術も行いました。
 慢性腎不全に対しては、腹膜透析、血液透析、腎移植などの治療法があります。必要に応じて他の診療科、医療機関と連携し、透析療法を含む腎代替療法を行っています。
消化器内科
Kコード 名称 患者数 平均
術前日数
平均
術後日数
転院率 平均年齢 患者用パス
K688 内視鏡的胆道ステント留置術 56 1.82 24.57 10.71 78.09
K6871 内視鏡的乳頭切開術 乳頭括約筋切開のみのもの 52 1.67 10.62 5.77 76.69
K6532 内視鏡的胃、十二指腸ポリープ・粘膜切除術 早期悪性腫瘍胃粘膜下層剥離術 44 0.89 7.02 0.00 77.98
K654 内視鏡的消化管止血術 39 1.74 12.44 2.56 70.03
K7211 内視鏡的大腸ポリープ・粘膜切除術 長径2cm未満 25 2.20 2.00 0.00 75.00
 消化器内科の上位5位までの手術は、順位変動はあるものの令和4年度と同じでした。
 1位と2位は、胆管結石や胆管狭窄に対する内視鏡的手術です。3位は早期胃癌を内視鏡を使用して切除する手術です。胃や腸からの出血に対して、緊急に内視鏡的治療が必要な場合でも対応できる体制も整えています。
 このほか、肝癌に対しての経皮的ラジオ波焼灼療法や、肝動脈を血管内塞栓剤で塞栓し、局所的に抗悪性腫瘍薬を投与する内科的手術を多く行いました。
その他(DIC、敗血症、その他の真菌症および手術・術後の合併症の発生率)ファイルをダウンロード
DPC 傷病名 入院契機 症例数 発生率
130100 播種性血管内凝固症候群 同一
異なる
180010 敗血症 同一 42 0.74
異なる 19 0.33
180035 その他の真菌感染症 同一
異なる
180040 手術・処置等の合併症 同一 19 0.33
異なる 11 0.19
 治療を行う上で、感染症などをきっかけに後発的に発症する代表的な疾患とその患者数です。
 入院契機が「同一」とは、入院のきっかけとなった疾患であることを示し、「異なる」とは、入院後に新たに発症した疾患であることを示しています。

・播種性血管内凝固症候群とは、重篤な感染症や悪性腫瘍などをきっかけに全身の血管内に血栓ができることで凝固因子が不足し、出血を引き起こす生命に危 険をもたらす疾患です。
・敗血症とは、肺炎や腎盂腎炎など細菌やウイルスによる感染症が原因で、全身に感染が広がり重症化する全身性の炎症性疾患です。
・真菌感染症とは、真菌が原因の感染症で、播種性血管内凝固症候群や敗血症と同様に重症化することが多い疾患です。
・手術・処置等の合併症とは、手術後の出血や創部の感染、透析シャントの狭窄・閉塞など、手術や処置のあとに発症した病態です。

 令和4年度と比較すると、敗血症は、入院のきっかけとなった「同一」と入院後発症の「異なる」ともに増加し、発生率が高くなりました。高齢の方は、基礎疾患のある方も多く、入院時から重篤な状態の方が多くなっています。原因疾患・原因菌を特定し、早急に抗菌薬投与等の治療を開始しています。
 手術・処置等の合併症がきっかけで入院された方の比率は、令和4年度と比べて減少しましたが、入院後発症は増加しました。
リスクレベルが「中」以上の手術を施行した患者の肺血栓塞栓症の予防対策の実施率ファイルをダウンロード
肺血栓塞栓症発症のリスクレベルが
「中」以上の手術を施行した
退院患者数(分母)
分母のうち、肺血栓塞栓症の
予防対策が実施された患者数(分子)
リスクレベルが「中」以上の手術を
施行した患者の肺血栓塞栓症の
予防対策の実施率
833 702 84.27%
 肺血栓塞栓症は、主に下肢の血管にできた血液の塊(血栓)が、血流によって運ばれて肺動脈に詰まり、呼吸困難や胸痛などの症状が現れる病気です。大きな血栓が肺動脈を塞ぐと酸素を取り込めなくなったり、血液を送り出せないため重篤な状態に陥ることもあります。飛行機や新幹線などで、長時間同じ姿勢で下肢を動かさないでいたり、水分不足などが原因で引き起こされます。
 入院診療においては、手術後や外傷などの様々な要因から、体を動かすことが難しい患者さんが多くいらっしゃいますので、予防のため治療後は、早期離床やできる範囲での下肢の運動をやっていただき、適切な水分補給をしていただいています。また、血流障害を予防するための弾性ストッキング着用、間欠的空気圧迫装置の使用、血液凝固予防薬の投与等も行っています。
 対象データは、肺血栓塞栓症予防のガイドラインで示されているリスクレベル「中」以上の手術をした患者さんに対して予防対策を行った実施率です。リスクレベル「中」に該当する診療行為は全身麻酔で行う手術などで、患者さんの年齢も含めてガイドラインで決められています。
 当院の実施率は、84.27%でした。肺血栓塞栓症は生命にかかわる場合がありますので、今後も最大限の予防を行っていきます。

血液培養2セット実施率ファイルをダウンロード
血液培養オーダー日数(分母) 血液培養オーダーが1日に
2件以上ある日数(分子)
血液培養2セット実施率
1368 1057 77.27%
 血培検査は、敗血症や感染症が疑われる患者さんから血液を採取し、血液中の細菌の有無や種類を調べる検査です。検査は1セットだけでは、見逃す可能性があるため、2セット採取することが基本とされており、感染症の診断と治療において有用とされています。細菌培養同定検査は、血液のほかに口腔や穿刺液などから採取した媒体で検査を行います。
 対象データは、細菌培養同定検査(血液)を同日に2回行っている患者数を分子として実施率を出しています。
 当院の実施率は77.27%でした。細菌培養検査を同日に2回行っている場合、血液以外の媒体で検査を実施した症例もありました。患者さんの状態によって適切な検査を行っていきます。


広域スペクトル抗菌薬使用時の細菌培養実施率ファイルをダウンロード
広域スペクトルの抗菌薬が
処方された退院患者数(分母)
分母のうち、入院日以降抗菌薬処方日
までの間に細菌培養同定検査が
実施された患者数(分子)
広域スペクトル抗菌薬使用時の
細菌培養実施率
673 517 76.82%
 抗菌薬は細菌による感染症の治療に使用される薬で、一般的に特定の細菌に対して使用しています。スペクトルとは抗菌薬が有効な細菌の範囲を示しています。広域スペクトル抗菌薬とは幅広い細菌に効果があり、病原菌が特定できない場合などに有効とされています。しかし過剰な使用は薬剤耐性のない細菌もやっつけるため、薬剤耐性菌のみが生き残る環境を作るリスクがあります。そのため、抗生剤投与前に検体の採取と細菌培養検査を行い、抗菌薬を適正に使用することが重要です。
 対象となるデータは、入院患者さんで広域スペクトル抗菌薬使用前に細菌培養検査を行った実施率です。
 当院の実施率は76.82%でした。この指標については、昨年度院内の「医療の質向上委員会」において取り組みを行い、前年度から実施率がアップしました。引き続きモニタリングと取り組みを行っていきます。
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