【2016年1月】初期研修医1年目
2016年1月15日掲載
秋月光(H27島根大学医学部卒)
新年あけましておめでとうございます。今年もよろしくお願いいたします。
私は島根大学医学部を平成27年に卒業し今年度から医師一年目として浜田で働き始めました。
出身は島根県隠岐の島、離島で15年間生活しました。
高校受験をきっかけに親元を離れ、寮と下宿で同級生や先輩、後輩、他校の学生たちと共同生活をおくっていました。
当時の進路は教師になりたいと思っていましたので理学部に進学するつもりでした。
ちょうどそのころ地域医療の崩壊が各地で叫ばれるようになりました。
地元の隠岐では島の産婦人科医がいなくなり島でのお産ができなくなりました。
島の妊婦さん方は海を渡り本土での出産を余儀なくされました。島で生活していた15年間で特別、医学に興味がなかったということもありますが、医療の不便さを実感していたはずなのにまったく考えたことがありませんでした。
いったん島を離れ、客観的に見られたからこそ島の現状を理解し考えるようになりました。その出来事が、私が医学の道を志すきっかけになりました。私は「救急医」になりたいと思っています。ちょっとしたけがや病気など軽症から重大な事故や、命に係わる病気まで幅広く対応する。救急車で運ばれてきてまず初めに対応する。時には病院で患者到着を待つだけでなく、ドクターカーやヘリに乗り直接現場に向かい、現場でより早急な対応をするなど、非常にやりがいのある分野だと思っています。
救命に関連して一つやりたいことがあります。それが被ばく医療。東日本大震災で未曾有の被害があり被ばくに対して一段と関心が高まったと思います。島根県は鹿島原発があり決して他人事ではありません。原子力発電所が崩壊したら松江だけでなく出雲の大病院までもが被ばく圏域に入ってしまいます。そんなことめったに起こらないから杞憂だと思うかもしれません。しかし有事に備えるのも救急医の仕事だと思います。何かあってから対応するのでは後手に回る、何事も準備で勝負が決まります。そのための準備をしておきたいと思います。
皆さんにお尋ねしたいことがあります。「医学」と「医療」は何が違うと思いますか。
私なりの考えですが、「医学」は科学だと思います。つまり医者は科学者です。病気の原因や治療法について日夜研究し、その成果を論文や学会で発表しこれからの医学の発展に努めること、これも重要な仕事の一つです。
一方、「医療」とは文化だと思います。自分が生活していて診られる範囲で地域住民の健康をまもるために、暮らしの中で一住民として患者とかかわること。教育や介護などほかの分野と同じ一つの生活構成要素だと思います。
私はここ浜田で、医師としての知識や技術、学術的なことを勉強し「医学」を身につけるだけでなく、地元の方々と交流し暮らしの中で人を診る「医療」を学びたいと思います。
これからみなさま方と何かしら接点があるかと思いますがその時には何卒よろしくお願いいたします。今年一年皆様に実りある年になりますことを願っております。寒い日がまだまだ続きますのでくれぐれもご自愛ください。